シングルマザーという生き方|現実と希望の狭間で
「シングルマザー」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
毎朝、子どもを起こしてご飯を作り、保育園や学校に送り出してから仕事へ。帰宅後は夕食の準備、宿題を見て、お風呂に入れて、寝かしつけ。気づけば自分の時間なんてほとんどない——。そんな日々を想像する方も多いかもしれません。
厚生労働省の調査によると、日本には約123万世帯の母子家庭があり、その数は父子家庭の約6倍にのぼります。3組に1組が離婚する現代において、シングルマザーとして生きることは、もはや特別なことではなくなりました。
私の周りにも、離婚を経てひとりで子どもを育てている友人が何人もいます。彼女たちの話を聞いていると、大変なことばかりではなく、子どもとの絆が深まったり、自分自身が成長したりする瞬間もたくさんあるのだと気づかされます。
シングルマザーになる理由と現状
ひとり親家庭になる理由は人それぞれ。離婚、死別、未婚での出産など、その背景は多様です。ただ、共通しているのは「子どものために、自分のために、前を向いて生きようとしている」ということ。
離婚が8割を占めるひとり親世帯の実態
シングルマザーになる理由として最も多いのが離婚で、全体の約8割を占めています。離婚の原因は様々ですが、女性側の離婚理由として多いのは以下の通りです。
- 性格の不一致
- 生活費を渡さない(経済的DV)
- 精神的な虐待(モラハラ)
- 身体的な暴力
- 異性関係
シングルマザーになる平均年齢は33〜34歳。そして、母子世帯になった時点での末っ子の平均年齢は約4.5歳という調査結果があります。つまり、まだ小さな子どもを抱えた状態で、新しい生活をスタートさせる女性が多いのです。

増加する未婚の母という選択
近年、注目されているのが「未婚の母」の増加です。都内では約4人に1人が未婚のシングルマザーとも言われています。
かつては「でき婚」や「望まない妊娠」といったネガティブなイメージが先行していましたが、現代では事情が異なります。経済力をつけた女性が自らの意思で「シングルで産み育てる」という選択をするケースも増えているのです。
ただし、未婚の母は離婚によるシングルマザーと比べて、養育費を受け取れる可能性が低いなど、経済的により厳しい状況に置かれやすい側面もあります。
シングルマザーが直面する5つの壁
ひとり親として生きることは、多くの課題と向き合うことでもあります。ここでは、シングルマザーが特に悩みやすい5つのポイントについて、具体的に見ていきましょう。
1. 経済的な困難——貧困率は約5割の現実
日本のシングルマザーの貧困率は約5割と言われており、これは先進国の中でも突出して高い数字です。
その背景には、いくつかの構造的な問題があります。
- 正規雇用で働くことの難しさ(子どもの急病などで休みが取りにくい)
- 養育費の不払い問題(約半数以上が養育費を受け取っていない)
- 男女間の賃金格差
- 女性が長時間労働しにくい社会構造
厚生労働省の調査によると、母子家庭の平均年間収入は約243万円。フルタイムで働いていても、月収13万円程度という声も少なくありません。
「貯蓄ができない」「子どもの教育費が心配」「病気になったらどうしよう」——。こうした経済的な不安は、シングルマザーの心に大きな影を落としています。
2. 仕事と子育ての両立という難題
ワンオペ育児という言葉がありますが、シングルマザーの場合、文字通り「すべてが自分ひとり」です。
朝から晩まで休む暇もなく、仕事も家事も育児も——。特に子どもが小さいうちは、急な発熱やケガで仕事を抜けなければならないことも頻繁にあります。それが原因で職場に居づらくなったり、最悪の場合は退職を余儀なくされたりするケースも。
2025年の調査では、シングルマザーの約半数が「小1の壁」を実感していると回答しています。保育園と違って放課後の預け先が限られ、仕事と育児の両立がさらに難しくなるのです。
3. 孤独感と精神的な負担
最近の調査では、約4割のシングルマザーが「孤独な子育て」に悩んでいることが明らかになりました。
相談できる相手がいない、愚痴を言える人がいない——。結婚していた頃は、たとえ頼りなくても「一緒に決める相手」がいました。でも今は、すべての判断を自分ひとりで下さなければなりません。
子どもの進路、習い事、病気のときの対応。小さなことから大きなことまで、すべての責任が自分の肩にのしかかってきます。その重圧は、想像以上に大きいのです。
4. 周囲からの偏見という見えない壁
「シングルマザーだから」——この言葉に、どれだけ多くの女性が傷ついてきたでしょうか。
賃貸住宅を借りにくい、保証人になってもらえない、仕事の面接で敬遠される。また、ママ友との関係でも微妙な距離感を感じることがあります。「片親だから」という目で見られることへの恐怖は、シングルマザーの心を少しずつ蝕んでいきます。
もちろん、すべての人がそうではありません。理解ある人もたくさんいます。でも、一度でも偏見にさらされた経験があると、つい身構えてしまうものです。
5. 養育費をめぐる問題
離婚後、元配偶者から養育費を受け取っている母子家庭は、なんと約28%しかいません。つまり、7割以上のシングルマザーが養育費を受け取れていないのです。
その理由として多いのは「相手に支払う意思がないと思った」「支払う能力がないと思った」「取り決めの交渉がわずらわしかった」など。面会交流の問題も絡み、元夫との関係が複雑化しているケースも少なくありません。
子どもを育てるのは両親の責任なのに、その負担が母親だけにのしかかる現状。これは社会全体で考えるべき問題です。
知っておきたいシングルマザー向け支援制度
「支援制度があることを知らなかった」「もっと早く申請していれば」——そんな後悔の声をよく聞きます。
シングルマザーを支える制度は実はたくさんあります。ここでは、ぜひ活用してほしい主な支援をご紹介します。
児童扶養手当——シングルマザーの生命線
ひとり親家庭を経済的に支援する最も基本的な制度が「児童扶養手当」です。
2024年11月からは制度が拡充され、所得制限限度額が引き上げられました。また、第3子以降の加算額も増額されています。
- 対象:18歳に達する日以後の最初の3月31日までの児童を育てているひとり親
- 全部支給の場合:月額46,690円(2025年度、子ども1人の場合)
- 支給:年6回(奇数月)
- 申請先:住んでいる市区町村の窓口
所得によって「全部支給」と「一部支給」に分かれます。自分がどちらに該当するかは、お住まいの自治体で確認してみてください。
児童手当——すべての子育て世帯が対象
児童手当は、シングルマザーに限らず子どもがいる家庭が受け取れる手当です。2024年10月から制度が大幅に拡充されました。
- 所得制限が撤廃
- 支給期間が高校生まで延長
- 第3子以降は月額3万円に増額
児童扶養手当と児童手当は別の制度なので、両方受け取ることができます。

ひとり親家庭等医療費助成制度
医療費の自己負担を軽減してくれる制度です。子どもだけでなく、親の医療費も助成対象になることが多いのがポイント。
具体的な内容は自治体によって異なりますが、病院での自己負担が数百円程度で済むケースも。子どもが体調を崩しやすい時期には、本当にありがたい制度です。
その他の支援制度
国や自治体には、他にもさまざまな支援があります。
- 住宅手当・家賃補助(自治体による)
- JR通勤定期の割引(最大30%)
- 水道料金・粗大ごみ処理手数料の減免
- 母子父子寡婦福祉資金の貸付
- ひとり親控除(所得税・住民税の控除)
- 高等職業訓練促進給付金(資格取得支援)
特に「高等職業訓練促進給付金」は、看護師や介護福祉士などの資格取得を目指すシングルマザーにとって心強い制度です。養成機関で学んでいる期間、月額10万円程度の給付金を受け取れます。自立に向けたスキルアップを応援してくれるこの制度、もっと多くの方に知ってほしいと思います。
【体験談】シングルマザーから再婚へ——みさとさん(47歳)の場合
ここからは、実際にシングルマザーを経験し、現在は再婚して幸せに暮らしているみさとさんにお話を伺いました。
ゆうな
みさと(47)
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シングルマザーの恋愛事情——葛藤と希望
シングルマザーになっても、恋愛したい気持ちは自然なこと。でも、そこにはさまざまな葛藤があります。
「母親なのに恋愛していいの?」という罪悪感
多くのシングルマザーが抱えるのが、この罪悪感です。
「子どもに寂しい思いをさせているのに、自分だけ楽しんでいいのか」「周りからどう思われるか」——。特に日本では、母親に対して「自己犠牲」を求める風潮が根強く残っています。
でも、母親である前に「ひとりの女性」であることを忘れないでほしい。自分が幸せでいることが、子どもの幸せにもつながるのです。
出会いの場はどこにある?
2025年の調査によると、シングルマザーが異性と出会えた場所のトップは「マッチングアプリ」でした。
時間や場所に縛られず、子どもを預けなくても利用できるのが大きなメリット。最近では「子持ち」「再婚希望者」に特化したアプリも登場しています。
他にも、職場、友人の紹介、趣味のサークル、地域のイベントなど、出会いの形はさまざま。大切なのは、無理をせず自分のペースで進めることです。
シングルマザーの恋愛を阻む3つの壁
調査から見えてきた、シングルマザーが恋愛で感じる壁は主に3つ。
【時間とお金の制約】
「デートの時間が取れない」「子どもを預ける先がない」「デート代の負担が厳しい」といった物理的な制約。子どもの急な発熱で約束をキャンセルせざるを得ないことも。
【子どもへの配慮における葛藤】
「子どもが新しい父親を受け入れてくれるか」「子どもに寂しい思いをさせないか」という心配。子どもの気持ちを最優先に考えるからこその悩みです。
【社会や周囲からの厳しい目】
「シングルマザーなのに恋愛なんて」という偏見。親族から反対されるケースも少なくありません。
恋愛がもたらすポジティブな変化
一方で、恋愛を通じて変化を感じたシングルマザーも多くいます。
「孤独感が解消された」「精神的に安定した」「自己肯定感が高まった」「子育てや仕事への活力が生まれた」——。信頼できるパートナーの存在が、日々の生活にハリを与えてくれるのです。
男性の約7割が「シングルマザーとの出会いに前向き」という調査結果もあります。子どもがいるからといって、恋愛を諦める必要はありません。
シングルマザーに関するQ&A
- Q. シングルマザーになって最初にすべきことは何ですか?
- まずは住んでいる自治体の福祉課に相談することをおすすめします。児童扶養手当をはじめ、利用できる支援制度を教えてもらえます。離婚届を出したらすぐに動くのがポイント。申請が遅れると、その分受け取れる手当も遅くなってしまいます。また、子どもの健康保険の切り替えなど、各種手続きのリストを作って漏れがないようにしましょう。
- Q. 養育費を払ってもらえない場合、どうすればいいですか?
- まず、離婚時に養育費の取り決めを「公正証書」にしておくことが重要です。公正証書があれば、支払いが滞った場合に強制執行ができます。すでに不払いが発生している場合は、弁護士に相談するか、法テラスの無料法律相談を利用しましょう。最近では養育費の立て替え払いや保証サービスを提供する自治体や民間サービスも増えています。
- Q. シングルマザーでも正社員になれますか?
- もちろん可能です。ただし、子どもが小さいうちは残業や急な休みの対応が難しく、採用に消極的な企業があるのも事実。最近はシングルマザーに理解ある企業も増えていますし、「マザーズハローワーク」では子育て中の女性に特化した就職支援を行っています。また、看護師や介護福祉士など需要の高い資格を取得することで、安定した正規雇用につながるケースも多いです。
- Q. 再婚したら手当はどうなりますか?
- 再婚すると、児童扶養手当の受給資格はなくなります。事実婚の場合も同様です。ただし、児童手当は継続して受け取れます。再婚後の経済状況によっては他の支援制度を利用できることもあるので、再婚が決まったら早めに自治体に届け出て、手続きについて確認しましょう。
- Q. 子どもに新しいパートナーをどう紹介すればいいですか?
- 子どもの年齢や性格、前の父親との関係性によって、適切なタイミングは異なります。一般的には、お付き合いが安定してから(半年〜1年程度)、最初は「ママの友達」として紹介し、子どもが慣れてきたら少しずつ関係性を伝えていく方法が多いようです。子どもの気持ちを最優先に、焦らずゆっくり進めることが大切です。

シングルマザーが幸せになるために大切なこと
最後に、シングルマザーとして生きていく上で、私が大切だと思うことをお伝えします。
完璧を目指さない
「母親なんだから」「ひとりで育てているんだから」と、自分を追い込みすぎていませんか?
部屋が少し散らかっていても、お惣菜に頼る日があっても、大丈夫。子どもは、お母さんが笑顔でいることが一番嬉しいのです。
頼ることは弱さではない
支援制度を使うこと、誰かに助けを求めること、それは決して恥ずかしいことではありません。
むしろ、使える制度を賢く活用することは、子どものためにも自分のためにもなる「前向きな選択」です。
自分の人生も大切に
子どものために生きることは尊いこと。でも、あなた自身の人生も同じくらい大切です。
恋愛したいと思ったら、その気持ちを大事にしていい。新しい幸せを求めることに、罪悪感を感じる必要はありません。
同じ境遇の仲間を見つける
同じシングルマザーとして頑張っている仲間の存在は、何よりの支えになります。
SNSやコミュニティアプリ、地域のシングルマザー向けイベントなど、つながる方法はたくさんあります。悩みを共有し、情報交換することで、見えてくる道があるはずです。
まとめ
シングルマザーとして生きることは、確かに大変なことの連続です。経済的な不安、孤独感、周囲の偏見——。乗り越えなければならない壁は、決して低くありません。
でも、あなたは決してひとりではありません。
利用できる支援制度があります。理解してくれる人がいます。同じ境遇で頑張っている仲間がいます。そして、新しい幸せに向かって歩み出す権利が、あなたにはあります。
「シングルマザーだから」と諦める必要なんてない。子どもと一緒に、自分らしく、幸せになっていい。
この記事が、あなたの明日への一歩を後押しするものになれば、これ以上嬉しいことはありません。
今日も頑張っているすべてのシングルマザーに、心からのエールを送ります。

